Top
皆まで言わない

それは今朝のこと。
いつもより早起きした(しなければならなかった)アタクシ、
やや虚ろな意識でほうじ茶を啜っていました。
テレビではお料理の先生がなにやらレシピを紹介しています。
どうやら、仕上げに生姜汁を回しかけるのがポイントらしい。
できあがった料理を口にした男性レポーター、
「う~ん」と唸って見せてからひとこと、
「生姜のいい香りがするんですけど」
彼はそれ以上は何も言わず、わしわしと料理をかき込んで、
カメラはスタジオへ戻りました。

カッティーン!
湯のみをテーブルに叩きつけましたわ、ええ。
「するんですけど」ってどういうこと?
そこで終わるってどういうことだねっ?!
「生姜のいい香りがするんですけど、実際は生姜を使っていないんですよね」
とか
「生姜のいい香りがするんですけど、私はあまり好きではありません」
ならわかる。
しかし、「するんですけど」で止める意味が私には皆目わからない。
敢えて表すなら「するんですけど・・・」、そう、"・・・"なのだろうと思うけれど、
人が書き言葉でこの"・・・"を使う時には、
受け手に察して欲しい「含み」が隠されているはず。
話し言葉で言葉尻を濁す場合にも同じような意図があってのことだ。
だけど、このレポーターの"・・・"には九分九厘何も隠されてはいない。
彼はこう言いたかっただけ。
「生姜のいい香りがしますね」
だったらなぜそう言い切らない?
アホか! (失敬)

このレポーターの件とは似て非なる問題になるのだけれど、
サッカーの中田英寿選手が彼の公式サイトnakata.netこんなことを書いている。
詳しくは彼の文章を読んでいただきたい。
ただ、ポイントを挙げてみると、
「今日の試合は2-2でしたが…」
こんな質問にどう答えればいいのか、と彼は問うている。
この質問の先にはいくつもの可能性があるではないか、
なのにそれもわからないままにどう答えればいいのか、と。
その通り。
これでは質問者が何を求めているのかが全くわからない。
もし私がヒデだったら、うーん、
「そうですね」とでも答えるか。
「今日の試合は2-2でしたが…」
「そうですね」
まるで、アルタでのタモリと客の問答だわね。
質問者は、そんなやりとりを求めているのか?
そうではないだろうに。
「ここから先を"・・・"で濁しておけば、そこを酌んだヒデが
彼らしい解釈でこの質問を広げる答えをしてくれるだろう」
こう書けばもっともらしいテクニックのようにも思えるけれど、
結局は、言葉で食べていく者として最大最悪の怠けではないのか?

先のレポーターといい、ヒデに質問をしたインタビュアーといい、
そしてテレビになんぞ登場しないごくごく普通の人といい、
口にする文の尻をあいまいに流す人間が
最近富に増えているような気がするのは私だけか。
皆まで言うな、という言葉があるが、
最近では、皆まで言わない、のが流行っているのだろうか。
そういう人に出会ってしまうと、意地悪な私はずっと黙ったまま、
不穏な空気が流れ出した辺りで
「で、何?」と聞き返してしまう。

「言い切れよ!」と私は思う。
「ポイントを絞れよ!」とも思う。
思わせぶりな余韻を使って自分の言葉からの責任逃れはどうかと思うよ。
ここまではっきりと言葉を操る才を与えられた動物なら
(他の動物がその社会の中でどこまで言葉を操っているかはわからないけれど)
もうちょっとちゃんとしなくちゃね、
と、自分を含めた皆への警鐘。

[PR]
Top▲ | by mikansky | 2005-10-17 23:44 | これってどうなのよ?
<< 揺れました! | ページトップ | 私信 >>
"cat-screams" Skin
by Animal Skin