人気ブログランキング | 話題のタグを見る
Top
mikanskyの本棚・『LOVE』みうらじゅん

まったくもう、Bookというカテゴリを作っておきながら、
全然記事が増えてないじゃん。

最近、読む時間が減ってきているのは事実。
そして、たまに「これだ!」という1冊に出会うと
それを言葉にして語ることが空しく感じられてしまって
書けなくなるのも事実。
そこをなんとか頑張って、
好きな本もそうでない本も、とりあえず愛情持って書いてみようと思います。

で、みうらじゅんの『LOVE』。
エッセイ集です。

愛という言葉が私は大の苦手です。
「愛してる」と言われても非常に困るし、
「愛してる」なんて口にしたことは、一度だけあったけれど
「ごめん、実はそうではないんだ」と、後日お詫びと訂正をした。
(サイテーですね)
「大好きである」とか「大切である」ということは何度でも口にできるけれど、
「愛してる」はダメなのね。

この本のタイトルは『LOVE』。
「面白いなぁ!」という感覚で軽く読めるエッセイが
これでもか、という感度に詰まっているので
とても読みやすい1冊です。
でも、このタイトルと、みうらじゅんという人と、
彼がこの本を作り上げた意味の全ては
「イントロ」に詰まっているのではないかな、と思います。
つまり、
みうらじゅんが、「イントロ」部分の文章(約4ページ)に、このタイトルをつけて、
この値段(667円)で売ったとしても、あたしは買うよ、
ということです。

「僕の知っているその女(ひと)は、日々成長することを止めない人だ。
それは男の仕事のように目立ったりしないし、
人から見ると地味な行為だ。
でも僕の唯一の自慢はそれに気づくことができる才能を持っていることだ。
 僕はその女(ひと)としゃべることや触れることで、
何もいっぱい回り道をしないでもすべてを知ることができる」
(『LOVE』みうらじゅん、角川文庫 6ページより)

色恋というものは、極端に言ってしまえば『欲』なわけで、
知りたい、知ってもらいたい、想いたい、想ってもらいたい、
抱きたい、抱かれたい・・・
もちろん欲が皆無ではなんのモチベーションもないわけだし、
進み過ぎればしんどすぎる。
言葉の交換や、触れ合うことで
その人の資質に気づくことができる自分の才能を
こっそり喜ぶくらいの欲が気持ちいい。
そしてそこにうまいバランスで愛がからんでくるならば、ね。

それにしても、殊、恋愛に関する『愛』は、
エロスとアガペが微妙に重なり合う部分に位置しているから
勘違いしちゃうこと(人)が往々にしてあるものなのですね。
ちょっとばかり盛り上がって乳繰り合ったからといって
「愛してるよ」「私も」なんて見つめ合ってみたり、
「愛とはなんぞや」と眉間に皺寄せて考えるほど、
多分軽くも無ければ重くもないんです、愛ってヤツは。
だから私は計りかねて、
人生ン十年経った今も、その言葉は口にすまいと己に掟を課しているのです。

「そう、愛なんてちっぽけな人間には一つしかないんだ。
無報酬であげられるものは本当に一つしかないに決まってる。
 でもそんなこと言い切ったらモテなくなるから言いたくないけど。」
(『LOVE』みうらじゅん、角川文庫 6ページより)

私は虫けらみたいにちっぽけだから、
一つしか持ち合わせていないそれを、
何の見返りも求めずに灌げる時が来るまで
垂れ流さないように抱えているのか。
で、「私は愛してるなんて言えないからね」なんて断言するからモテないのか。
(えっ?そうじゃなくて顔とスタイルのせいだろうって? 藤木め!)
そんなことをなんとなく感じさせてくれた1冊です。

そんなわけで、一生「愛してる」と言われずとも、
「愛してるわ」と口にする日が来なくとも、
それはそれで已む無しなのですが、
すっげー青臭い理想を言うならば、
私がいなくなる瞬間か、相手がいなくなる瞬間に、
「愛させていただきました」
と言って終われたら本望かと。

『LOVE』 みうらじゅん 角川文庫

Top▲ | by mikansky | 2006-02-03 22:25 | book
<< mikansky姉妹、吠える | ページトップ | ナイスなガイ >>
"cat-screams" Skin
by Animal Skin