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私の速さ あなたの速さ

まるで動く歩道に乗った様に
一見とてもスムーズな速さで日々を流れていく人たちに、
必死で歩調を合わせようとしている女の子がいます。

その子は、
動く歩道に飛び乗るタイミングを逃してしまったから、
みんなが同じ速さで流れていくその歩道を
自分の足で一生懸命追いかけています。

だけど、機械と人の足は元々作りが違うから、
彼女の歩みは時々もつれたり、止まってしまうこともあります。
そのたびに引き離されているような気がして、
「悪いのは私の足」と、まるで罰を与えるように自分を律します。
彼女は、決して他人を責めません。

「同級生はみんな、大学に進んだり就職をしたり、
どんどん前に進んでいるのに、
センセー、私はどうして同じ速さで進めないのでしょう」
別れ際に、彼女はそんなことを言いました。

「人にはそれぞれの速さがあるはずなんだけれどね。
進みたい方向が見えているのなら、
あなたに合った速さで進むことは何も間違っていないのよ」
そんなふうに答えたけれど、
18歳の彼女がこれまでに乗り越えてきた出来事を
なんとなく知っていた私には、
その焦燥が痛いくらいにわかりました。

乗り越えてきた出来事ゆえに
今の彼女が更なる辛さを抱えていることを、
彼女のお母さんからの電話で今日私は知りました。
「これからもお世話になるために、
 センセーにはお話しておかなければと思いました」と。

とても賢くて、美しい女の子です。
そう、鈴を転がすような、という形容がぴったりの声で
大変優しく話す子です。
自分に娘がいて、その子が彼女のように愛らしかったら
それはそれは幸せだろうなと思います。

彼女が人を責めない以上、
世の中が悪いとか、こんな世相は間違っているとか、
私もそんなことを言うつもりはありません。
人を責めず、人と比べず、人に阿ず、
自分の速さで幸せになれる強かさとしなやかさの上に
彼女が前へ進みますように。
そして、誰かにしっかりと愛され、愛しますように。

そんなことを思って、今日もまた私は泣き女です。

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Top▲ | by mikansky | 2006-06-28 23:41 | other
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