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エレンディラ
愛ゆえにヒトを殺してしまった人間は
背中に羽が生えるんだって。
でも、元カレの奥さんを殺してしまったところで
羽は生えてこないよね。
だって、愛と嫉妬はまるで別のものだと思うから。

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ということで見てきました、『エレンディラ』
ある日、思いがけなくsnowdropさんからお誘いメールが舞い込み、
ご一緒させていただくことになったのです。

ひと言で言うと、エネルギーの全てを吸い取られた感じ。
実の祖母から、娼婦として自分の"女"を売ることを強いられた少女エレンディラと
偶然彼女に出会ってしまった少年ウリセスの愛を軸に
物語は進むのですが・・・

あんなに息苦しいくらいの色恋沙汰って
この世に存在する?
「そりゃあ、お芝居だからね」と言われちゃえばそれまで。
でも、もしも存在することが証明されたら、私は泣くね。
うれしくて。
いや、不覚にも私は、ラストで実際に泣きそうになったりもしたんだけど。
もうね、初めてエレンディラと結ばれたウリセスなんて
「僕は、今生まれたんだ!今までの人生なんて意味がない」
てな感じのことを叫んじゃって、
それを見ている私は
「いやぁ、そんな恋愛があるものなの?」なんて
乾ききった己が人生を嘆いてしまうほど。
まさに、鬱陶しいほどに激しい色恋。
そんなことあるわけないじゃん!って感じたからこそ引き込まれる。

ラブシーンがとても美しい。
美しい上に、これでもか!というほどに繰り広げられる。
そのたびに堂々と裸体をさらす、エレンディラ役の美波に息を呑む私。
美しい気魄に、客席の空気もぴんと張りつめる感じで。

そこまで愛し合っていながらも、
祖母の死によって自由の身になった瞬間に、
ウリセスを置き去りに独り走り出すエレンディラ。
走って、走って、走って、独りきりの自由に狂喜するように
幸せな笑顔で走って。
そうだ、
なぜこんな生活をしなければならないのかと詰め寄るエレンディラに
おばあちゃんは言ったっけ。
体を売って金を作れば
「私がいなくなっても、男に頼らず生きていけるんだよ」
たかだか16,7の孫娘に次から次へと男をあてがい、鎖でつなぎ、
手に入る金は全て自分の懐に入れるような祖母が
口にしたこの言葉だけは、
なぜだか本当に孫娘を思う言葉のように聞こえた。
「独りで生きるのは怖いさ。
でも、さばさばしたもんだよ」

果たして、エレンディラは最後の瞬間、
ウリセスよりもずっとずっと強かったなぁ。
永遠に忘れないと言う彼に
「永遠なんてない。瞬間だけ」と言い放ち、
この愛があれば生きていけるという言葉に
「この愛があれば私は死んでいける」と笑う。
愛していたのは絶対に嘘ではないけれど、
彼女の魂はそれでも何にも寄りかからず、
独りですっくと立っていたなぁ。

面白かった。
並大抵の演出家には使いこなせないだろうなってくらいに奥行きのある舞台。
(客席よりも舞台の方が広そうだ)
おばあちゃん役を演じた瑳川哲朗の言葉・発声の美しさ。
実は今までさほど気に留めていなかった、
中川晃教の歌声のきれいなこと。
いや、裸になればすごいというわけではないけれど、
数百が凝視する舞台の上に、一糸まとわぬ姿で居て
あそこまで堂々と美しい美波という人。
全て面白かった。
マイケル・ナイマンの音楽も、
まさにマイケル・ナイマンだったし(笑)

終演後は、劇場近くのファミレスでsnowdropさんと
南米文学の話やら「演出家って・・・」なんて話をして、
(ドリンクバー、私はやはりおかわりせず)
後味もなかなかよく、
誘っていただいたことにほくほくと感謝をしながら家路へ。

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電車の窓から、夕焼けがきれいだった。
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Top▲ | by mikansky | 2007-08-26 00:18 | today
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