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プレゼント記事 1

海外へ旅に出る時、決まって私は、少し恐怖にも似た不安を抱えて飛行機に乗る。
飛ぶのが怖いわけではない。
長時間のフライトに退屈することを嫌っているのでもない。
ただ、飛行機で遠くの国に飛ぶ最中の、
まるでどの時間にも属さずに、ぽっかりと"どこでもない空間"に入り込むような
そんな感覚が妙に寂しくて、私は少し不安になる。

たとえば日本からカナダへ向かうのならば、
夕方に日本を飛び立った飛行機は時間の流れに逆らって飛び、
日本にいれば翌日の未明であろう時に、前日の昼日中のカナダへと着く。
時差があるのだから、そんなことは至極当たり前のことなのだけれど、
では空を飛んでいる間の私は一体どんな時間に属しているのだろうと
どうしても考えてしまうのだ。
そして、考えれば考えるほど、自分が"あちら側"とでも言うような
不思議な空間にはまりこんでしまうような気がして、
とてつもなく寂しくなってしまう。

そんな、多分誰にも理解されないであろう寂しさを抱えて毎回旅立つものだから、
せめて空港を発つのは昼の明るい時間帯がいいなぁと、常々思っている。
(とはいえ、時間帯が選べるわけではないけど)
空にぽっかりと浮かぶ銀色の月を見上げながら
搭乗ゲートへと続く長い通路を歩き、
夜の闇に浮かび上がる機体が見えたあたりで
まるでこの空間と自分を断ち切るように携帯の電源をオフにして
どこでもない"あちら側"へ足を踏み入れるなんて、
考えただけでも涙が出るというものだ。
人も空気もざわざわと浮き足立っている昼日中に発つのなら、
そのざわざわに自分の気持も紛れ込ませて、うまく誤摩化せるような気がする。

だけどきっと、
旅に出るということは、多かれ少なかれ何かを断ち切って、
今いる空間から異次元に近いほどの空間へ足を踏み入れることなのだろう。
そう考えると、日々の全ての瞬間は旅に似ていて、
目の前の飛行機に乗り込んで違うどこかへ行くために
携帯の電源をえいっ!と切るようなことを繰り返しては
私たちは生きているのだなぁ、とつくづく感じる。
それでも、小さな不安を抱えつつも乗り込めば、
たどり着く先にはこことは違うわくわくがあるということも知っている私は、
そしてきっとあなたも、
また旅に出て、また日々を暮らしていくのだろう。


 Nさんへ 
 次にたどり着く先には、またきっとわくわくが待っています。

 頂いたお題「空港・携帯・月」
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Top▲ | by mikansky | 2008-06-19 23:12 | other
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