見てきました、『マリー・アントワネット』。
うーん、どうなんだろう。 どう言い表したらいいんだろう。 まず、どんな場面でも私の心に浮かんだ言葉は "不憫"。 わずか14歳でフランスへ『差し出される』マリーも不憫。 ベッドの中で毎夜夫から拒絶され続ける彼女も不憫。 浪費、美食、享楽、贅を尽くした快楽の中を くるくると泳ぎ続ける彼女も、 子を為してもさらに遊び続ける彼女も、 少しずつ母としての自覚を持ち始める彼女も、 怒りに駆られた民衆の前に頭を垂れる彼女も、 ベルサイユを離れる馬車の中で夫と微笑み合う彼女も、 すべてが不憫。 14歳での結婚など、珍しくない時代だったのでしょう。 でも、どんな時代であれ、子供には子供の、 14歳には14歳の本能が植えつけられていることに変わりはないのでは。 見知らぬ男に嫁ぎ、子を作れ子を作れと責め立てられ、 その務めのためと、そしてわずかなよすがを求めて身を寄せた夫に拒絶される14歳、 今の世で言えば中学2年生の女の子。 やはり、どこかが狂っているような気がします。 残念なのは、すべての要素が浅くしか描かれていず、 マリー・アントワネットをはじめとした登場人物の その時その時の思いが見えてこなかった点です。 これまでは、民衆の側から彼女を見て、 稀代の悪女のようにとらえる考え方・視点が割と多かったので、 この映画が敢えてマリーの側にポイントを置いたところに期待をしていました。 でも、彼女の心の機微がうまく描写できていないというか、 把握しづらいのです。 夫のそばを離れずにベルサイユに残った彼女が 城になだれ込んだ民衆の前で深々と頭を下げるシーンなどは とても美しく荘厳だったからこそ もう少し彼女の真意が伝わるように描いて欲しかった。 これ、ともすると、 ファッションとグルメとお遊びばかりに目を奪われた女の子ちゃんたちは 「マリーってアタシたちとあまり変わらないんだぁ」とか 「マリー・アントワネットってちょっとカッコイイよね」 という感じで終わってしまうかもしれません。 とはいえ、もちろん胸に響くシーンもいくつかありました。 一晩じゅう遊び倒して明けた朝。 日の出を見ながら「こんなに美しい景色はない」と感動する彼女の言葉に対して、 周りの遊び仲間は何も答えません。 いろいろな言葉を口にしてはいるのですが、 「きれい」という言葉に「きれい」と呼応する言葉はひとつもない。 その一瞬に彼女の本質や、周囲が何ひとつ彼女を理解していないことが 垣間見えたような場面でした。 音楽はなかなか面白かったし、ため息が出るような色彩も素敵。 また、何度か見られたマリーが庭を歩く場面では なぜか毎回ほどよい風が吹いていて、 彼女のドレスの裾がとても気持ちよく揺れます。 それを見るたびに、 背筋を伸ばしてスカートを風に揺らして真っ直ぐと歩きたい気分にさせられました。 映画を見る前にでも、見た後にでもかまいません。 この時代にフランスという国に、フランスの民衆に、 そしてマリー・アントワネットに何が起きたのかということを きちんと知ってこそこの映画を見る・見た意味が生まれるのではないかと思います。 Top▲ |
by mikansky
| 2007-01-28 22:41
| movies
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