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夏が来れば思い出す
あれは、そう、8月の暑い日のことだったわ。
ええ、とても暑かった・・・。

私は、高校時代からの友人あいちゃんと
京都の旅を満喫していたの。
その日は、1日いろいろなところを歩き回って、
少し疲れていたけれど、
私たちは浮かれていた。
だって、夕方から鴨川沿いの川床で食事をすることになっていたから。
お料理屋さん、それも京都の床なんて、
そりゃあ若かった私たちには夢のような贅沢。
あと1時間もしたらそんな楽しみが待っているんだもの。

四条通は人が一杯で、
私とあいちゃんは横に並んであるくことができなかったの。
私が先に立って、時々振り向くようにして
話をしながら歩いたわ。
少しの間会話が止んだとき、
帽子をかぶった私の頭を、後ろから「ぼこん!」と叩いたの、
あいちゃんが。
ううん、当然あいちゃんだと思ったのよ。
そう思うのが当然でしょ?
ただ、その「ぼこん!」は意外と強い力で、
首に軽い衝撃を感じるほどだった。
で、振り向いて言おうと思ったの、
「もぉ!なんでそんなに強く叩くのよ、あいちゃんったらぁ」

言おうと思って振り向いたのに、
あいちゃんはそこに立ち止まって
目をきょとんとさせて、口をぽかんと開けてた。
そして、こう言ったわ。
「みかちゃん、ふん、ふん・・・」
ふんふん?

人って不思議ね。
その一瞬は一体なんのことか全くわからないのに、
次の瞬間にすべての回路がつながるみたいに
我が身に起こった不幸のすべてを悟るの。

やられたわ・・・

私の帽子の上には、
てんこ盛りになったハトのフン。

「みかちゃん、あし、あし・・・」
川床に浮かれて大股に歩いていた私のチノパンの
ふくらはぎの部分にも
ナイアガラの滝のように流れる、ええ、ハトのフン。

どんだけぇぇぇ?!

そう、今よりもずっとずっと若かった頃の話よ。
川床でどんな料理が出たのかも覚えてないくらい昔のこと。
でもね、慌てて戻ったホテルのバスルームで
半泣きになりながら洗ったチノパンと、
あの瞬間首に感じたあの重さを、
なぜか毎年夏になると思い出すの。

夏の日の、少し切ない、思い出ね。

ねぇ、これだけは覚えておいてほしいの。
『高いところから落ちるハトのフンは、驚くほど重い!』
Top▲ | by mikansky | 2007-05-24 22:49 | other
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