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ともだちのこと

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私には友達が少ない。

学生だった頃は、友達の友達は・・・といった感じで
「顔見知り」の輪はまるでねずみ講式に増えていったものだった。
でも、大人になった今では
本当につながっていたい人たちが私の周りに残った。
淘汰なんて言ったら変だけれど。
だから、私には「友達」が少ない。

Mちゃんはその数少ない友達の中のひとり。
もう20年近い付き合いになる。
彼女はいつも穏やかで、
そういえばいつも笑っている。

彼女は2年前にお母さんを亡くした。
ある日お母さんは
「眠くて眠くてたまらない」
と彼女にこぼした。
自転車に乗っていても眠ってしまうという言葉に
Mちゃんはお母さんを無理矢理病院へ連れて行った。
脳梗塞。
その日から、彼女の6年間に渡る介護の日々が始まった。

お姉さんはとうに嫁ぎ家を離れていたため、
転職を考えて仕事をやめたばかりのMちゃんの肩に
全ての荷がのしかかった。
結局は寝たきりになってしまったお母さんの介護の合間を縫って、
家事ができないお父さんのために家事の全てをこなし、
病院、役所での手続き、
全部、全部、彼女は引き受けた。
独身なのに、主婦。
「時々、気が変になりそうになる」
彼女の愚痴を聞いたのは、たった一度だけ。

お母さんが亡くなったことを私や他の親しい友人が知ったのは
お葬式から1ヶ月後のこと。
「なんで知らせてくれないの!!」
私たちの泣きながらの抗議に彼女は
「もし、お葬式であなたたちの顔を見たら、
私はきっと崩れてた。
最後までしっかりしてなきゃいけないと思ったから」
と頭を下げた。

少しだけ自由が利くようになった彼女が
私の家に遊びにきた時のこと。
私の母が「たいした名物もないし」と、
自分で作った煮物やスーパーで買ったお菓子やジュース、
梅干や海苔などを袋に詰めてお土産に持たせた。
無事に帰りついたと電話をくれた彼女に
「あんなくだらない物の詰め合わせでごめんね」
と私が謝ると、彼女は
「袋を開けたら、いろんなものが出てきてさぁ、
ああ、こういうのがお母さんなんだよなぁ、って久しぶりに思い出した。
涙が出たよ」
ああこの人は、6年間もごくごく普通の「母と娘」という関係を味わうことなく
目の前にいるお母さんを守り続けたんだ、とその時気づかされた。
いつもベッドサイドで母親に話しかけていた彼女の姿が浮かんだ。
お母さんは、後半はもう話すことも大きく動くこともなかったけれど。

2年たった今でも、彼女は
「あの時私がああしていれば」
「母にもっとこんなことをしてあげればよかった」
といった後悔を口にする。
初めは
「そんなことないよ」「あなたのせいじゃないよ」
と答えていた私も、今はただ黙って聞くようにしている。
多分、彼女がこんなふうに言うのは
ただ自分を責めているのではなく、
忙しい毎日の中で一瞬、
後悔を口にして小さな痛みを感じることで
お母さんとの記憶をしっかり留めておこうとしているんじゃないかしら
という気がするから。
だから私は、黙って聞いている。

Top▲ | by mikansky | 2004-07-27 17:16 | people
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